そもそも、どんなときにEAを止めるべき?判断の目安を整理
EAを停止すべき代表的なタイミング
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- 相場が急変し、EAのロジックが想定外の動きをしているとき
- 重要経済指標や要人発言など、市場への影響が大きいイベントの直前
- VPSやネット環境が不安定で、取引が正常に行われないとき
- 含み損が大きくなり、これ以上の損失を避けたいと判断したとき
- EAの動きに違和感を覚え、手動での管理に切り替えたいとき
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EAは一度稼働させると、24時間体制でルールに従い自動で取引を続けるため、初心者にとっては「いつ止めるべきか」という判断が非常に難しいポイントでもあります。
特に「EAを止めたら損をするのではないか」「操作を間違えてチャートや設定が壊れるのでは」といった不安から、操作に踏み出せず放置してしまうケースもよく見受けられます。
まずお伝えしたいのは、EAを停止したからといって、即座に損失が確定したり、ポジションが強制的に決済されることはありません。
EAの停止とはあくまで「自動売買機能を一時的に停止する」操作であり、現在保有しているポジションそのものに直接影響を与えるものではありません。
むしろ、EAは常に“想定されたルール通り”にしか動かないため、急な相場変動や突発的な外部要因には柔軟に対応できないという弱点があります。
例えば、2018年3月、アメリカのトランプ政権が中国製品に対する関税強化を表明した際、米ドル/円は1日で約200pips(約2円)以上の下落を記録しました。このようなニュースは突然発表されるため、EAが対応する間もなくエントリーしてしまい、大きな損失を抱えたユーザーも少なくありません。
また、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻では、戦争リスクの高まりにより市場全体が大きく反応しました。ユーロ/ドルは1週間で300pips以上の急落を見せ、安全資産とされる米ドルや金に資金が一気に流れ込むという「逃避行動」が顕著に表れました。
このような突発的な事象が発生した際、EAは“過去の統計やロジック”に従って取引を続けてしまいます。
たとえ通常時には高い勝率を出していたとしても、このような非常時には逆に「予測通りに動かない相場」が致命的となり、含み損が急拡大するリスクがあります。
こうした“先が読めない”局面では、EAを一時停止し、相場の動向を冷静に見極めるという判断が、損失回避の上で極めて有効です。
【関連記事】初心者必見!EA停止が必要な5つのシチュエーションと対策方法
EAを停止すると、どんなことが起きる?EAを停止させるメリットとデメリット
EAを稼働させていると、24時間自動で売買が行われます。EAはあらかじめ設定されたルールに従って取引を続けるため、感情に左右されることなく、一定の安定性を保った運用が可能です。
さて、そんなEAを停止するとどうなるのでしょうか。
新規の注文は停止されますが、すでに保有しているポジションはそのまま残り続けます。
比較項目 | EA稼働中 | EA停止中 |
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取引の実行 | 24時間自動でエントリー・決済を行う | ポジションは維持されるが、新規注文は行われない |
相場への対応力 | ルールに基づき機械的に処理する | 手動裁量による柔軟な対応が可能 |
心理的負担 | 相場を見続ける必要がなく負担が少ない | 自分で判断する必要があり、負担が増す |
損益管理 | プログラム通りにポジション管理される | 裁量判断で損切り・利確の柔軟性がある |
ミス・トラブルの可能性 | EAのバグや通信障害の影響を受けることも | 人為的ミスのリスクがある |
(EAを停止するメリットとデメリット比較表)
EAを停止するということは、つまり「決済する・持ち続ける」といった判断を、トレーダー自身が行わなければならない状態になるということです。
EAを停止してから、必要となるのが人間であるアナタの「裁量判断」であり、これまでEAに任せていた取引の判断を、自分自身の相場観や情報分析に基づいて行うことを意味します。
たとえば、重要な経済指標の発表を控えているときや、相場が明らかに不安定な方向に動き出したときなどは、自動売買よりも人の判断のほうが柔軟に対応できる場面です。
ただし、EAを停止している間は、当然ながら自分の判断で損切りや利確のタイミングを見極める必要があります。
これは、「すべての判断責任を自分が背負う」というプレッシャーと隣り合わせであるということです。感情に左右されてエントリーや決済を誤ると、EA任せ以上に損失が膨らむリスクもあります。
それでも、EAのロジックが現在の相場と明らかに噛み合っていない場合や、EAの挙動に不信感がある場合は、恐れずに一度停止する判断が重要です。EAに任せ続けることが“正解”とは限りません。
もちろん、忙しい方や心理的負担を軽くしたい方にとっては、EAの稼働継続が最適な選択肢であることに変わりはありません。
しかし、相場の流れに合わせて柔軟に対応したい場合には、EAの停止→一時的な手動管理という選択も間違いではありません。
大切なのは、自分の運用スタイルに合わせて「EAに任せる」と「自分で判断する」の切り替えができることです。これこそが、単にEAを使うだけでなく、“EAを本当の意味で使いこなす力”に他なりません。
ちなみに、「EAの成績が悪化してきた場合」や「手動に切り替えてポジションをリセットしたい場合」なども、EAを一時的に停止するメリットがある典型的なタイミングです。
なお一旦停止していたEAを再起動させるというのも1つの手段であると覚えておきましょう。
成績悪化はEA停止のサインかも!EA停止を検討すべき判断基準
「なんだか最近、成績がパッとしない」――そんなふうに感じながらも、具体的な判断基準が分からず、EAをそのままにしてしまってはいないでしょうか。
特に初心者のうちは、「たまたま負けてるだけかも」「もう少し見守れば戻るかも」と楽観的に考えてしまいがちです。しかし、EAは一度“崩れたロジック”が修復されることはほとんどなく、早めの対応が肝心です。
たとえば、直近10回の取引のうち8回以上が損失だった場合、これは単なる一時的なブレではなく、EAのロジックそのものが相場に合っていない可能性が高いと考えるべきです。
チェック項目 | 具体的な状況 | リスク |
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直近10回の取引で8回以上が損失 | 明らかに勝率が低下している | ロジックが相場に適応していない可能性 |
含み損が月初から増え続けている | ポジションが解消されず耐えている状態 | 強制ロスカットのリスクが高まる |
過去の成績と異なる挙動をしている | 設定ミスやEAの不具合も疑われる | 思わぬ誤発注による損失リスク |
ナンピンや両建ての回数が異常に多い | 通常より建玉数が増えている | 資金管理の破綻を引き起こす恐れ |
バックテスト成績と大きく乖離している | リアル運用と乖離が継続している | EAのパフォーマンス自体が破綻している可能性 |
(EA停止を検討すべき代表的なサイン一覧)
あるいは、月初からずっと含み損が増え続けているような状態は、ナンピンが繰り返されていても利確に至らないという、非常に危険なサインです。
「あの時にEAを止めておけばよかった」という後悔を防ぐためにも、数値的に異常が続いたら、いったん停止してEAの運用を見直すようにしましょう。
【関連記事】FXの成功するナンピン戦術とは?ナンピンの計算方法とメリット・デメリットを徹底解説!
手動に切り替えてポジションをリセットしたい場合もEAの停止が必要!
運用を続けていると、「このポジション、本当に持ち続けていて大丈夫だろうか?」と感じる瞬間があるかもしれません。
EA任せにしていたはずが、どうも挙動がしっくりこない。そう思ったときこそ、EA運用を一旦止めるべきサインです。
判断のきっかけ | 具体的な状況 | 対応策 |
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相場がトレンド転換し始めた | EAは逆張り方向にポジションを持っている | EAを停止し、損切り・決済を手動で行う |
含み損ポジションが長期化している | 利確せずに数日間保持し続けている | 建玉を整理し、保有ロットを縮小する |
資金効率を見直したい | 証拠金維持率が急低下している | 不要ポジションを決済し、新しい戦略に移行 |
他のEAに切り替えたい | 現在のEAロジックが環境に合っていない | 一度手動決済でチャートをクリアにしてから再導入 |
裁量判断で方向性を変えたい | 経済指標や相場観に基づき自ら判断したい | EAを停止し、裁量取引に切り替える |
(EA停止+手動判断に切り替える代表的なタイミング一覧)
特に相場がトレンド転換しはじめたときや、含み損のポジションを何日も抱えているときは、自動ではなく手動で方向転換をするという判断が必要になる場面です。
EAはルール通りに動く反面、目の前の相場状況には対応できません。
たとえば経済指標発表直前のタイミングなどでは、長年トレードしている人ほど、EAに任せるよりも、自身の経験則に基づいた裁量判断のほうが有効と感じることがあります。
「運用方針を見直したいとき」や「EAではなく自分の裁量でトレードしたいとき」も、EAを停止することには大きな意味があります。これは単なる停止ではなく、“自分の判断に主導権を戻すための一時停止”という位置づけです。
そのうえで、現在の建玉を整理・決済し、ポジションをいったん“ゼロ”に戻すことで、相場をフラットな目で見直す余白が生まれ、結果として、過剰なリスクを回避できたり、損失を最小限に抑えられる場合があります。
自動売買の停止の流れとその方法
はじめてEAを停止したいと思ったとき、多くの方が不安に感じるのが「本当にEAは止まってるの?」「設定していたポジションはどうなるの?」という点でしょう。
先にも触れたように、EAを停止することで“これ以上自動で新しい注文が出るのを防ぐ”ことができます。今あるポジションはそのまま維持され、新たなエントリーは行われません。
当然「EA停止=強制決済ではない」ので、ポジションが突然消えることもありません。
ひとくちにEAの停止方法と言っても「すべてのEAを止める方法」から「個別にEAを止める方法」など、いろいろなやり方があります。
この章では、それぞれのEAの停止方法について詳しく解説します。
1. セットしている全EAを止める
STEP1:MT4画面上部にある「自動売買」ボタンをクリック
まず最初に行うのは、MT4画面上部にある「自動売買」ボタンをクリックして、全体のEA稼働を止めることです。
この時点でEAは新たな売買をしなくなります。
その後、MT4の上側の「自動売買」をクリックします。
STEP2:自動売買の緑マークが赤停止マークに変わっているのを確認
「自動売買」の左側の「緑の再生マーク」⇒「赤の停止マーク」に変われば、全てのEAが停止します。
STEP3:チャート右上のEA名の顔文字が怒り顔になっていればEA停止中
チャート右上のEA名の右側にあるニコちゃんマークが怒り顔になっていればOKです。
(怒り顔はEAが「稼働してない」という意味です)
2. 個別にEAを止める
すべてのEAを一括で止めたくはないけれど、一部のEAだけが不調な場合や、特定の戦略だけ見直したいときには、個別での停止がおすすめです。
あるEAが連続で損失を出している。もしくは相場と明らかに噛み合っていないと感じるときには、
他のEAを稼働させたまま問題のあるEAだけを止めることで全体の収益性を保ちながらリスクをコントロールできます。
また、新しいEAを試す前に既存の一部を止めることで、比較検証も行いやすくなります。
STEP1:チャート右上の「EA名」を確認し、カーソルをチャートの上で右クリック
チャート右上の「EA名」を確認し、カーソルをチャートの上で右クリックします。
STEP2:「エキスパートアドバイザ」⇒「設定」⇒「OK」の順にクリック
続いて、「エキスパートアドバイザ」⇒「設定」の順でクリックします。
「全般」タブをクリックします。そして、「自動売買を許可する」のチェックを外して「OK」をクリックします。
STEP3:チャート右上のEA名の顔文字が怒り顔になっていればEA停止中
ニコちゃんマークが怒り顔になっていればOKです。
これで操作したEAは個別で停止します。
なお、この状態は操作していないEAは稼働しているので、ご注意を。
3.チャート上にあるEAのみを削除する
EAの動作を止めた後でも、チャートを引き続き使いたいときには「EAのみを削除する」方法が便利です。
たとえば、テクニカル分析用にチャートは維持したいが、自動売買機能は切り離したいときにおすすめです。
この方法を使うとEAは削除されますがチャートは残るので、ラインやインジケーターの設定を維持しながら、運用環境だけを整理できます。
また、EAを一時的に外して別のEAと比較検証したいときにも、この方法を利用するのが◯
STEP1:チャート右上の「EA名」を確認する
チャート右上の「EA名」を確認し、削除したいEAを選ぶ。
STEP2:チャート右上の「EA名」を確認する
カーソルをチャートの上で右クリックします。続いて、「エキスパートアドバイザ」⇒「削除」の順でクリックします。
STEP3:チャート右上の「EA名」が削除されているのを確認する
チャート右上の「EA名」が消えればOKです。
チャート上のEAは削除されますが、チャートはそのまま残ります。
4.チャートとチャートに表示されているEAを一度に削除する
特定のEAとチャートの組み合わせ自体が不要になった場合は「×ボタン」でチャートごと閉じる方法が最も手早く確実です。
例えば、その通貨ペアでの運用を終了する場合や、全く異なる戦略に切り替える場面では、EAとチャートを同時に削除することで画面がすっきりし、作業効率も向上します。
また再設定ミスや誤操作を防ぐうえでも、不要なチャートは思い切って閉じてしまう方がリスクか管理として安全です。
STEP1:削除したいEAがセットされているチャートを選択
削除したいEAがセットされているチャートを選択します。
STEP2:「×」をクリックして、チャートを閉じる
選択したチャートの右上にある「×」をクリックして、チャートを閉じてください。
これでチャートだけでなく、EAも同時に削除されます。
さて、EAの停止方法は以上で終了です。次はEAを停止したあとに手動でポジションを設定し、手動決済する方法をご紹介します。
EA停止後に重要!「ポジションの手動決済」の基本とポイント
ポジションの手動決済とは?押さえておきたい5つの要点
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- EAを停止しても保有中のポジションは自動で決済されない
- 自分のタイミングでポジションを決済するには「手動決済」が必要
- EAが利確・損切りを行う前に裁量で対処したいときに使える方法
- MT4上でワンクリックで決済できる簡単な操作で完結できる
- 手動決済後にEAの停止や削除を行うことで安全な管理が可能
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「EAを止めた後、ポジションってどうなるの?」と試したことが無い方は思われるでしょう。
EAを停止させると、EAは新規ポジションを取りません。
しかし、ポジション保有中にEAを停止した場合、保有中のポジションは自動で決済されないので、自分で現在保有しているポジションを、EAに任せず手動で利益確定または損切りするためには、手動で決済を行う必要があります。
この操作はMT4で簡単に実行可能で、次のような流れになっています。
このように手動決済の方法を知っておけば、EAを停止・削除する前にポジションを安全に整理できるため、予期せぬトラブルを防ぎやすくなります。
STEP1:「ワンクリック取引」の設定を行う
MT4の上側の「ツール」⇒「オプション」を選択
次に「取引」タブの「ワンクリック取引」にチェックを入れます。
免責事項を読んでいただき、「私はこれらの利用規約に同意します。」にチェックを入れて、「OK」を押します。
その後表示される画面に「ワンクリック取引」にチェックが入っているのを確認して、「OK」ボタンをクリックします。以上で、ワンクリック取引の設定完了です。
STEP2: ターミナルを表示する
MT4の上側の「ターミナル」をクリックします。そうすると、MT4の下側にターミナルが大きく表示されます。
STEP3:保有ポジションをターミナルで確認
MT4の下側にターミナルが大きく表示されたターミナルの左下の「取引」タブをクリックしてください。
STEP4:「×」ボタンをクリックし、対象ポジションを決済
そうすると、保有中のポジションの一覧が表示されます。スクロールして右側のコメント欄から手動決済するEAを確認します。
そして、手動決済したい取引の行で「×」ボタンをクリックすると手動で決済され、以上で手動決済が完了です。
(コメント欄の表示はこちらを参考にしてください)
よくある質問(FAQ)|EA停止・手動決済の基本
Q1. EAを停止すると保有しているポジションはどうなりますか?
A. EAを停止しても、すでに保有しているポジションはそのまま残ります。
自動で決済されることはありません。ポジションを解消したい場合は、自分で手動決済する必要があります。
Q2. EAを止めると損失が確定してしまうのでは?
A. いいえ。EAを停止しても、損切りや利確は自動では行われません。
EAが新たに注文を出さなくなるだけで、損益が確定するわけではありません。ポジション管理は手動で行いましょう。
Q3. EAの停止と削除の違いは何ですか?
A. 停止は「動作を止める」だけで、EA自体はチャート上に残ります。
削除は、EAの設定をチャートから完全に取り除く操作です。誤って再稼働させたくない場合は削除が有効です。
Q4. すべてのEAを一括で止める方法はありますか?
A. はい。MT4画面上部の「自動売買」ボタンをクリックすると、すべてのEAが同時に停止します。
ボタンのマークが緑から赤に変わり、チャート右上のニコちゃんマークが怒り顔になれば停止完了です。
Q5. 一部のEAだけを個別に止めることはできますか?
A. 可能です。チャート上で右クリックし、「エキスパートアドバイザ」→「設定」→「自動売買を許可する」のチェックを外すと、そのEAだけ個別に停止できます。なお運用中の他のEAには影響しません。
Q6. 手動でポジションを決済するにはどうすればいいですか?
A. MT4下部の「ターミナル」→「取引」タブを開き、保有ポジションの行にある「×」ボタンをクリックすれば、ワンクリックで決済できます。
事前に「ワンクリック取引」の設定をONにしておくと便利です。
Q7. どんなときにEAを止めるべきですか?
A. 以下のような場面ではEAの停止が推奨されます:
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- 経済指標発表前後で相場が急変しそうなとき
- ドローダウンが一定基準(資金の20~30%)を超えたとき
- 金曜夜など、週末のギャップが予想されるとき
- 地政学リスクや突発ニュースが発生したとき
- 高ボラティリティ(VIX20以上など)で不安定な相場のとき
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EAの自動性に頼りすぎず、状況に応じて手動判断を加えることが安定運用のカギです。
Q8. 手動決済のとき、どのポジションがEA由来か分からない場合は?
A. MT4のターミナル画面内「コメント欄」を確認しましょう。EA名や設定内容が自動で表示されていることが多く、裁量取引と自動売買のポジションを見分ける参考になります。
Q9. 手動決済をしたあとは、EAをそのままにしておいて大丈夫ですか?
A. ポジションを手動で決済したあとでも、EAを再稼働させると再び自動でポジションを持つ可能性があります。
そのため、再稼働させたくない場合はEAの「停止」か「削除」を合わせて行いましょう。
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