takahのEA開発ばなし・その6 総取引数を考える

こんにちは、takahです!

EAを評価する一つの指標に総取引数があります。

総取引数とは、バックテスト期間におけるEAの取引数を表しています。

EA04-HANA-

こちらはEA-BANKに登録されているHANAのバックテストデータですが、これを見ると、HANAは 2005/1/1~2018/4/30の13年4カ月で2,032件の取引があったことが分かります。

この総取引数はEAにおいて重要な指標で、大数の法則から総取引数が多くなればなるほどロジックの優位性を示すことができるとされています。

ですが、今回は別の視点で総取引数を考えてみたいと思います。

 

総取引数とエントリー、決済ロジックの関係

EAをつくる際、EA作者は総取引数に結構気を遣います。それは、先のEAの優位性を示す意味もあるのですが、それに加えて総取引数はEAの性格を如実に表すからなんです。

EAの性格を表す?何のこと?

と思われるかもしれませんね。。。

性格のお話をする前に、総取引数とエントリーロジックの関係についてお話しします。

例えば、EAをつくっている過程でこのようなことがあったとします。

あるEAがあります。そのEAは決済ロジックを持たず指値(TP)、逆指値(SL)決済になっています。このEAに移動平均線を使ったエントリーロジックを考えました。そうすると、過去10年間で5,000件のエントリーがありました。

しかし、それだけでは心許ないと思い、ボリンジャーバンドを使ったエントリーロジックを増やしました。そうすると、エントリー件数が3,000件まで絞られましたが、成績が少し改善しました。

ただ、まだ成績が安定しなかったので、今度はエントリー条件にRSIを組み入れてみました。すると、エントリー件数は1,000件まで絞られてしまいましたが、成績がとても安定してきました。

ここから、エントリーロジックが増えるほどエントリー件数は減っていく(=絞られていく)傾向があることがお分かりになると思います。

尚、エントリーロジックと対をなす決済ロジックについてですが、こちらは既にエントリーされているトレードを決済をするロジックなので、EAの成績を変化させることはあっても、エントリー件数に直接的な影響を及ぼすことはありません。(間接的には決済ロジックによりエントリーの回転数が上がり、総取引数が増える可能性はあります)

つまり、

 

エントリーロジック総取引件数に影響を及ぼす。エントリーロジックが多くなると総取引件数が少なくなる傾向がある

決済ロジック   :総取引件数に影響を及ぼさない。決済ロジックが多くなっても総取引件数は変わらない

 

といったことが分かります。このことから、総取引件数は以下のようなEAの性格を表しています。

 

総取引件数が多いEAエントリーロジックが少ない成績は主に決済ロジックで成績を調整している(傾向がある)

総取引件数が少ないEAエントリーロジックである程度エントリーを絞っている成績はエントリー、決済ロジックの両方で調整している(傾向がある)

 

あくまで1つの可能性として捉えていただきたいのですが、総取引件数をみると、こういったEAの性格が分かってきます。

 

総取引数と時間足の関係

総取引数はエントリー、決済ロジックといったEAの性格を表していますが、時間足との関係を見ることで新たな性格が分かってきます。

MT4には「1分足、5分足、15分足、30分足、1時間足、4時間足、日足、週足、月足」の9種類の時間足を使うことができます。この内、よくEAで使われるのは1分足~4時間足ですね。

そもそも、なぜローソク足はこんなにたくさんの種類があるのでしょうか??

それは、各時間足の性質が違うからだと私は思っています。

例えば、この図をご覧ください。

これは1分足が5本動いたときの5分足の動きを表しています。

これをご覧いただくと、1分足だと激しい動きをしていますが、5分足だとその動きが集約されているのが分かります。

つまり、上位時間足は下位時間足の動きをある程度集約させた結果として表示されるため、急激な相場変動も吸収した見え方になります。これが急激な相場変動やダマシを受けにくい理由でもあります。これは上位時間足のメリットでもありますが、その反面、下位時間足に比べローソク足の本数が少なくなるというデメリットもあります。

 

下位時間足:急激な相場変動やダマシなどがそのまま表示されるが、ローソク足の本数が多い

上位時間足:急激な相場変動やダマシなどが吸収されて表示されるが、ローソク足の本数が少ない

 

ここまで分かったところで、ローソク足と総取引数の関係を考えてみます。

例えば、過去10年間で1,000件の取引数がある2つのEAがあったとします。ただし、1つは5分足専用EA、もう1つは4時間足専用EAだったとします。

このとき、どちらの時間足でもエントリーの時間間隔は同じで、

1,000(件) ÷ 10(年) ÷ 12(カ月) ≒ 約8(回)

1カ月あたり約8回(=週2回)程度のエントリー頻度があることが分かります。

 

しかし、ローソク足の数で捉えると少し勝手が変わります。

5分足の場合、10年間でローソク足の本数は、

12(本) × 24(時間) × 20(日/カ月) × 12(カ月) × 10(年) ≒ 約691,200(本)

です。同様に4時間足の本数は、

6(本) × 20(日/カ月) × 12(カ月) × 10(年) ≒ 約14,400(本)

となります。この数字を総取引数で割ると1エントリーあたりのローソク足の本数が分かります。

 

5分足 の場合:約691,200(本)で1,000エントリー ⇒ 約691本に1回エントリー

4時間足の場合:約  14,400(本)で1,000エントリー ⇒ 約  14本に1回エントリー

 

ここから何が分かるでしょうか?

片方は約691本に1回エントリーするロジック、もう片方は約14本に1回エントリーするロジックです。どちらも同じ時間間隔でエントリーされますが、5分足の場合、4時間足と比較して、エントリーが絞られていることが分かりますね。

つまり、5分足と比べ、4時間足はエントリーの頻度が高いことから回転率が高いことが分かります。それはその時間足における優位性を示す一つの指標にもなります。

そのため、総取引数が同じEAの場合、

 

短時間足の場合:エントリー頻度が低い、回転率が低い

長時間足の場合:エントリー頻度が高い、回転率が高い

 

といった性格が見えてきます。

 

こういったことに着目すると、EAの性格がある程度見えてきます。

参考までに、今回お話しした内容を踏まえて以下のEAをご覧ください。

 

このEAは「長時間足」×「高回転」×「利大損小」をコンセプトに開発しています。

このEAは約15年で3,000エントリーほどあり、片側1ポジションで設計しています。また、回転率は以下のような感じになっています。

これは4時間足のチャートですが、結構な回転率でエントリーされているのがお分かりになるかと思います。

 

そして、このEAの性格は…お分かりいただけましたか?

そうです。このEAはエントリーロジックを少なくしており、決済ロジックで成績をつくり出すEAです。(といっても、エントリーロジックだけでもPF1.0以上はありますが…)

また、長時間足を使っていることからダマシに強く、利大損小ですが高回転型なので利益を積みやすいような性格づけをしています。まだ開発途中ですが、うまくできあがったらEA-BANKに公開させていただきますね。

 

今回は総取引数から読み取れることをご紹介させていただきました。ぜひ、ご自身が稼働させているEAの総取引数からEAの性格を読み取ってみてくださいね!