EA運用の失敗は「資金管理・売買ルールの設定・EAと相場状況の不一致」のいずれかで起こります。
EA運用で損失ゆ出す人の多くには、
- 損失を「資金のうち10%」など割合でしか考えていない
- 時間足の設定が合っていない
- 取引時間に合ったスプレッド・スリッページの設定ができていない
という共通点が見受けられます。
相場は取引時間や経済市場の状況によって、良くも悪くも常に変化します。
通貨の相場は取引時間や経済の状況によって変化するため、トレーダー側もそれに合わせたロットや損失幅でEAを運用しないと失敗してしまうのです。
この記事ではEAの設定ミスによる損失など、自動売買でよくある失敗を挙げ、その原因と対策を解説します。
【関連記事】FX×自動売買(EA)で大損する原因と回避する方法は?
【関連記事】忙しい人のためのFX×自動売買!FX初心者がEA(自動売買)を選ぶ理由とおすすめな自動売買EA3選
ロット・DD──資金を守る2大セーフティルール
- ロットサイズの誤設定は数回の損失で資金を大きく減らす
- ドローダウンを過小評価すると想定外の相場変動で破綻する
- 感情トレードが計画的な資金運用を崩す
- リスク許容度に応じた資金配分が不可欠
- 損失許容ラインを明確に設定し遵守することが長期運用の鍵
取引をEAに任せ自動で行っていても、トレーダーがしっかり資金管理できなければ利益は出ないもの。
EA運用における資金管理の失敗として、次の2つが多く見受けられます。
まず最初の落とし穴は「過剰ロット設定」です。ロットとは、取引する金額の単位のことです。
資金に対してロットが大きすぎると、ほんの少し相場が動いただけで口座のお金が一気に減ってしまいます。
10万円しか入っていない口座で「1ロット(10万通貨)」を取引するのは、薄い氷の上を全速力で走るようなものです。
ほんの小さなひび割れ(相場の逆行)で、一気に氷が割れて落ちてしまいます。少しでも逆方向に相場が動けば、すぐに資金が半分以下になりかねません。
損失を抑えるには「1回の取引で失ってもいい金額は、資金の1〜2%」にするのがおすすめです。
10万円なら、1回の損失を1,000〜2,000円以内に収まるようにロットを調整すれば、損益があっても大ダメージにはなりません。
「勝ってたのに資金が消えた…」それは“ドローダウンの誤算”が原因かも?
次に注意すべきは「ドローダウンの過小評価」です。
ドローダウン(DD)とは、資金がどれくらい減る可能性があるかを示す数字です。
EAのバックテストで「最大DD 20%」と表示されていても、実際の運用では相場の急変や想定外の値動きによって、30〜40%まで膨らむことがあります。
これは天気予報で「雨は20%の確率」と言われたのに、突然の大雨が降るようなもの。予報だけを信じて傘を持たなければ、びしょ濡れになるリスクが高まります。
同じように、DDを甘く見積もると、急な相場変動で資金が一気に減ってしまいます。
自動売買で利益を上げるには、バックテストのDD数値を少なくとも1.5倍以上見積もり、その金額に耐えられる資金配分を組むことが大切です。
ロット設定を間違えるだけで資金崩壊!自己資金を守り抜くための黄金計算式
「せっかく運用するなら効率よく稼ぎたい」と考えるからこそ、資金に対して過剰なロットを設定してしたくなるのかと思います。お気持ちはよくわかりますが、やみくもなロット設定は大きな損失のもとです。
下記の表からもわかるように、10万円の口座で0.3ロットを運用した場合、50pipsの損失を7回繰り返すだけで資金はほぼゼロになります。
口座残高 | ロット設定 | 1回の損失幅(pips) | 1回の損失額 | 破綻までの損失回数 |
10万円 | 0.3ロット | 50pips | 約15,000円 | 約7回 |
10万円 | 0.1ロット | 50pips | 約5,000円 | 約20回 |
30万円 | 0.5ロット | 50pips | 約25,000円 | 約12回 |
30万円 | 0.2ロット | 50pips | 約10,000円 | 約30回 |
(ロット設定の目安)
「1回の損失は小さいから大丈夫」と考えるかと思われますが、相場の状況とEAのロジックが合わない場面では1回の取引で数万〜数十万程度の損失を出すことも珍しくありません。
安全な運用を行うためには、次の計算式を使います。
推奨ロット=口座残高 × 1〜2% ÷(1pipsあたりの金額 × 許容pips) |
たとえば、10万円の口座で許容損失を資金の2%(2,000円)、1pipsあたりの金額が100円、許容損失幅が50pipsの場合、推奨ロットは 0.4ロット ではなく 0.04ロット が適正です。
適正なロットを計算できるようになれば、短期的な利益に惑わされず、安定的に資産を育てられるようになります。
なぜなら、毎回の損失をあらかじめ「許容範囲内」に抑えられ、たとえ負けが続いても口座が空になるような大損をを避けられるからです。
トレーダーの多くが勝てるロジックを使っているにも関わらず資金を減らしてしまうのは、ロットの張りすぎが原因です。
逆に言えば、適正ロットを守るだけで、同じEAでも結果は大きく変わります。
適正ロットの習慣は、「負けても立て直せる運用体制」を作るための第一歩。EA運用で失敗しないために、ロット設定は外せない要素です。
同じ10%でも損失額は天と地!ドローダウンの罠から資金を守る方法
口座残高 | 最大DD(%) | 最大DD(金額換算) | 生活への影響イメージ |
10万円 | 10% | 1万円 | 1か月分の電気代 |
50万円 | 10% | 5万円 | 家族の食費1か月分 |
100万円 | 10% | 10万円 | 子どもの給食費と教材費1年分 |
300万円 | 10% | 30万円 | 半年分の生活費の一部(食費+光熱費) |
(ドローダウンと生活への影響例)
ドローダウン(DD)とは、運用中に資金が減少する割合を指します。損失の割合を考えるとき、最初に「10%」を目安にする人は少なくないでしょう。
資金10万円のうち、10%の損失があった場合の金額は1万円です。
これだけを見るとそれほど大きな損失には見えないかもしれませんが、100万円で10%のDDが起きれば10万円の損失になります。これは旅行や買い物など自分にとってのご褒美がなくなる金額かと思われます。
会社員の場合、急な出費やボーナス減額と重なると、生活費や貯金計画に影響します。子どもがいる場合には、その教育費や日常のやりくりにも関係するため、経済的にも精神的にも負担になるでしょう。
「10%」という数字も実際の金額で考えると、損失の大きさが実感できると思います。
自動売買においても「割合」ではなく「実際の金額」に変換して損失の割合を考えると、自分にとって無理のないDD設定が見えてきます。
わずかな設定ミスで利益減!EAを守るためのチェック項目
- パラメーター設定を誤るとEAの戦略が正しく機能しない
- 時間足の選択ミスでシグナルの精度が低下する
- 推奨されていない通貨ペアを使うと勝率が下がる
- ロット数やリスク設定を変えすぎると検証データと乖離する
EAの設定が適切なほど、自動売買で利益を上げやすくなります。稼げるかどうかを左右するのが「時間足」と「通貨ペア」です。
たとえば、1時間足用に設計されたEAは「1本のローソク足=1時間の値動き」を基準に売買判断を行います。
時間足を5分足に設定すると、1時間の判断基準がわずか5分ごとに判定されるため、無駄な取引が多発します。
その結果、勝率が40%から25%に低下し、利益が出にくくなるケースがあります。
また、EUR/USD専用に作られたEAは、比較的値動きが安定しているユーロドルの特性を前提にパラメーターが調整されています。
これをGBP/JPYで使うと、ポンド円特有の大きなボラティリティ(値動きの激しさ)に対応できず、1回の損切りが想定の2倍以上になることもあります。
実際に、時間足の設定を適切にしなかった結果、想定損失が5,000円だったのに12,000円まで膨らんだケースもありました。
時間足や通貨ペアの選択ミスは「EAの戦略そのものを崩す」要因です。どのくらい稼ぎたいかによって多少変動があるのは構いませんが、「適切な設定の範囲」を覚えてEAを運用できるようにデモなどで練習しておきましょう。
【関連記事】デモ口座とリアル口座の違いとは?デモ口座の上手な活用法やチェックポイントを徹底解説
その設定、利益を捨てているかも?スプレッドとスリッページの正しい見極め方
市場状況 | スプレッド設定の目安 | スリッページ設定の目安 | 調整のポイント |
東京時間(9:00〜15:00) | 1.0〜1.5pips | 0.5〜1.0pips | スプレッドが安定している時間帯なので低めに設定 |
欧州時間(16:00〜23:00) | 1.5〜2.0pips | 1.0〜1.5pips | 取引量が多くボラティリティが高いためやや広めに設定 |
NY時間(22:00〜5:00) | 2.0〜3.0pips | 1.5〜2.0pips | 指標発表時の急変動に備えて余裕を持たせる |
早朝・週明け(5:00〜8:00) | 3.0pips以上 | 2.0pips以上 | スプレッドが極端に広がる可能性があるため高めに設定 |
(スプレッドの調整方法)
スプレッドは通貨を売る値段と買う値段の差のこと。
スリッページは注文した価格と実際に約定した価格のずれのことです。
これらの設定はEAが注文を出す際の許容条件になります。
それぞれの設定が適切でない場合、売買サインが出ても注文が成立せず、利益のチャンスを逃したす。
東京時間はスプレッドが約1.0pipsで安定していますが、NY時間の経済指標発表前後には一時的に3.0pips以上に広がることがあります。
時間帯の変化を考えずに同じスプレッドやスリッページの条件で運用すると、特定の時間帯だけ注文が通らなくなり、利益が上がりません。
そのような不利益はインシゲーターの活用で防げます。
MT4では、スプレッドをリアルタイムで表示するインジケーターを導入すれば、取引する時間帯の平均スプレッドを確認できます
その数値を基に、「東京時間は低め、欧州・NY時間はやや広め、週明けや早朝はさらに広め」の認識でスプレッドを調整すると、損失を抑えつつ、利益を上げやすくなります。
インジケーターについては以下の記事で解説していますので、そちらをご一読ください。
【関連記事】MT4がわかればFXは怖くない!完全初心者向け「自動売買」スタートガイド
相場は生き物!失敗を防ぐカギは「環境対応」にあり
- トレンド相場に強いEAはレンジ相場で損失が増えやすい
- レンジ相場に特化したEAは急なトレンド発生時に弱い
- 相場環境の変化はEAのロジック全体に影響を与える
- 過去の成績が良くても異なる相場環境では同じ結果にならない
- 相場環境を定期的に判定しEAの稼働を見直す必要がある
トレンド相場(価格が一方向に動く相場)に強いEAでも、価格が一定範囲を行き来するレンジ相場では負けが続くことがあります。逆に、レンジ相場に強いEAは、大きな方向感が出たときに含み損を抱えやすくなります。
つまり、EAが得意とする稼ぎ方と相場の状況がずれているため、利益が出にくいのです。
USD/JPYが1か月間にわたり1円単位で上昇を続けるトレンド相場では、トレンド追随型EAは高い勝率を維持します。
しかし、その後の数週間、0.5円幅で上下するレンジ相場に入ると、同じEAでも逆張りエントリーが増え、損切りが多発します。これにより、月間利益が20%から一気にマイナス5%に転落することも珍しくありません。
失敗を防ぎ利益を確保するには、相場の状況に合わせてEAを運用する必要があります。
勝率の鍵は相場とのマッチング!EAの得意パターンを見抜く
相場の状況に合わせてEAを使い分けるには、それぞれの特徴を把握することが求められます。
まずトレンドフォロー型は、価格が上がり続けたり下がり続けたりする相場で強いです。大きな流れに乗って利益を伸ばせますが、横ばいの相場ではうまくいきません。
レンジ逆張り型は、価格が一定の範囲で上下する相場に向いています。安いときに買い、高いときに売って利益を積み重ねます。ただし、大きな値動きが始まると損失が出やすくなります。
スキャルピング型は、相場が落ち着いていてスプレッドが狭いときに活躍します。小さな利益を何度も取るため、取引コストの安さが大事です。激しく動く相場では不利になります。
ブレイクアウト型は、値動きが一定の範囲を抜けて大きく動く場面に強いです。ニュースや重要発表の後に効果的ですが、だましの動きに注意が必要です。
EAタイプ | 得意な相場 | 苦手な相場 | 主な特徴 | 運用時のポイント |
トレンドフォロー型 | 強い上昇や下降のトレンド相場 | レンジ相場 | 大きな値動きに乗って利益を狙う | トレンド発生時に稼働し、レンジ時は停止または別EAに切り替える |
レンジ逆張り型 | 一定の価格帯で上下するレンジ相場 | 急激なトレンド相場 | 安値で買い、高値で売る戦略 | レンジ幅が狭すぎないことを確認し、トレンド転換時は早めに停止 |
スキャルピング型 | スプレッドが安定した静かな相場 | 急変動が多い相場 | 数pipsの小さな値幅を積み重ねる | 取引コスト(スプレッド)が低い時間帯を選んで稼働 |
ブレイクアウト型 | レンジ後の急な値動き相場 | ダマシが多い相場 | レンジを抜けた方向にエントリー | 指標発表や重要イベント前後に有効だが、ダマシ回避のフィルター設定が必要 |
(EAが得意な稼ぎ方と相場の相性)
自動売買で失敗しないためには、「EAの得意・不得意」を理解して、相場に合わせて使い分けることが大切です。
また、運用中も定期的に成績を確認し、相場に合わなくなったら停止や別のEAに切り替えることも、利益を上げ続けるために、ぜひ行って頂きたい作業です。
【関連記事】初心者必見!EA停止が必要な5つのシチュエーションと対策方法
過去も現在も勝てるか?二段階テストでEAを徹底診断
項目 | バックテスト | フォワードテスト |
データ期間 | 過去の相場データを使用 | リアルタイムまたは直近の相場データを使用 |
目的 | EAのロジックが過去相場でどう機能したかを検証 | 現在の相場環境でEAが実際に機能するかを確認 |
メリット | 長期間の検証が短時間で可能。パラメーター調整もしやすい | スプレッドやスリッページなど実運用に近い条件で検証できる |
デメリット | 過去に最適化されすぎると実運用で通用しないリスク | 検証期間が限られ、統計的な信頼性が低くなる場合がある |
適した活用タイミング | EA導入前の初期検証やロジック理解 | EA導入直前の最終確認や稼働後の継続評価 |
(バックテストとフォワードテストの違い)
EAの性能を正しく判断するには、バックテストとフォワードテストを両方を行うべきです。
バックテストは、過去の相場データを使ってEAの動きを確認する方法です。
数年分のデータでも短時間で結果が出るため、バックテストをすると、そのEAがどんな相場に強いかや、どのくらい資金が減る可能性があるかを把握できます。
ただし、過去のデータに合わせすぎると、実際の相場ではうまくいかない「過剰最適化」になる危険があります。
過去で良い成績でも、今や将来の相場で同じように勝てるとは限らないので、それは頭の片隅に入れておいてください。
一方、フォワードテストは、現在の相場データを使ってEAを性能を評価するテストです。スプレッドやスリッページなど、実際の取引とほぼ同じ条件で検証できます。
具体的にはデモ口座や少額のリアル口座で1か月ほど運用し、売買のタイミングや決済の正確さを確認します。
実際の取引環境で試せるのが強みですが、期間が短いとデータ量が少なくなり、信頼できる判断がしづらくなる場合があります。
まず、バックテストでEAの特性や得意・不得意な相場を把握し、その後フォワードテストで現行の相場に適合しているかを確認すると、実際の取引で大損しにくいEAを選べます。
損失ゼロは無理でも、失敗は減らせる。鍵はEA選びにあり!
EA運用の失敗は「資金管理・売買ルールの設定・EAと相場状況の不一致」のいずれかで起こります。
自動売買でコンスタントに稼ぎ続けるには、最適なロット設定や相場状況に応じたEAの使い分けが必要になります。
とは言え、変化する相場状況に合わせてEAを完璧に使い分けたり、ロット設定をしたりするのは時間も手間もかかるものです。
そんなときにおすすめしたいのが「EABANK」です。
EABANKで配布しているEAは、仮に損失が出た場合でも、それが小さくなるように、ロットなどが初期設定されているものもあります。
さらに、厳選された100種類以上のEAのバックテストデータや運用成績も公開されているため、様々なEAを比較したり、試したりしながら「自分にとって最適なEA」を見つけることができるでしょう。